唇を隠して,それでも君に恋したい。

ボクのヒミツの綻び。

目覚めた時,バスのなかには僕とリューだけ。

回らない頭で驚くと,リューは僕を揺するのをやめる。



「リュー」

「資料館。なかなか降りないから,和寧と敦ももう先に行って貰った」

「ごめん。僕1度寝るとふかくって」



僕はリューに謝りながら,急いで降りた。



「皆あんなところに……」

「敦が」

「?」

「何を言いかけたのか知らないけど」



うんと頷いて立ち止まる。

隣の席の和寧でなくリューが残ったのは,何か言いたいことがあったからなのだろうか。



「和寧と,なんかあった?」

「え」



何かって……

何もないと言えば嘘になる。

だからと言って,それを話そうと思えばリューに僕と和寧の共通点を明かさなくてはいけない。

リューがその存在を知っているからといって,和寧のことまで話して良いことにはならないと思うから。

僕はうんともううんとも言えず,しばし硬直した。
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