唇を隠して,それでも君に恋したい。
「どうして?」
代わりにごまかすように理由を問う。
リューは僕から視線をはずして,手のひらを首筋に当てた。
「最初はあんな警戒してたのに,今は1番力を抜いてる……ようにみえるから」
なんだ,そっか。
「とくに何もないよ。僕が新しく近づいてきた人間を警戒しすぎてただけだから。意味なんてないし,和寧は良いやつだよ。リューも気にしないで」
ほら行こうと促すと,リューはまだ悩むようにして歩き出す。
「何かあったら……遠慮せず言えよ」
「わっ」
ぽんと後頭部に手のひらが当たった。
僕はくすりと笑ってその背中を追いかける。
和寧は良いやつだけど。
リューも優しい。
僕はいつか,リューの優しさにも答えを出さないといけないなと思いながら,静かに瞳を落とした。