唇を隠して,それでも君に恋したい。
「あ。伊織」
先生から遅れて説明を受け,資料館へ。
少し進むと,スズが僕を見つける。
そして迷うように首をかしげた。
「和寧知らない?」
「え,和寧?」
「気付いたらいなかったんだよね。……まぁいいか」
「うん。いいんじゃない? そんなに広くもないし,そのうち会えるよ」
どこにいるか分からない和寧を探すより,ちゃんと展示物を見た方が良い気がする。
どのみち資料館に当てられた時間は長い。
伝えていかなかったということは,和寧も特に気にしていないのだろう。
「リュー,スズと一緒に先に行ったら? 僕ちょっとお手洗い寄ってから追いかけるから」
寝てばっかりで忘れてたけど,結構長い間行ってなかったんだよな……
あくびをしながら伸びをして,僕は曲線になった狭い道を歩いた。
あれ,誰かい……る?
ちらりと向かいに見えた人影。
その距離の近さと人物に,僕はうげと眉をひそめる。
壁に押し迫られた男が一人と,その首に抱き付くようにして手を回す女が一人。
どちらも年若く,僕と同じ制服を着用していた。
良く見れば,女の方は片手でキスを拒まれ,膨れている。