唇を隠して,それでも君に恋したい。


「いっ」



僕は爪先をぐんと踏んづける。




「ほんと。タイミングいいよな。敦」



こくんと飲み込む。

やっぱり,敦だったんだと。

僕はますます出られない。

だけど言い訳するなら,今しかないと僕は身勝手にも今度は和寧を突き飛ばした。



「あ,敦! これは……」

「この前の放課後。僕らが何しようとしてるか察して声かけてきたんやろ?」



……え?



「やっぱり,気付いてなかった? 思い出してみ。あん時,僕ばっか喋ってから,伊織は声だしてなかったやろ? なのに,敦は迷わず伊織を呼んだ。僕たちがあそこに入った時にはもう,敦はあそこにいて,僕らに気付いて,聞いてたんや」


……あ。



「まぁ別に。さあキスしましょーなんて言うてないから,気づいたのは雰囲気で? 咄嗟で? とかそんなもんやろ。……聞きたかったのも,"これ"かな」



僕らが何をしようとしていたのか。

その発言で更に決定的になる。

バスでの敦の言葉。

それが何なのか,分かっていて和寧は遮ったのだ。

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