唇を隠して,それでも君に恋したい。


「そろそろバス戻ろうかと思ってて。2人も戻ろう。三太が自販機で変なジュース買ったんだよ。ね,リュー」



ずんと立つリューを見ると,何本もペットボトルを抱えている。

思いがけない光景に,僕はふはっと笑った。

いつの間にか,肩に力が入っていたみたいだ。

 

「じゃあ早く戻ろうか」

「うん」



敦は珍しく,皆の後ろを僕と歩く。

和寧はちらりと僕を振り返ったけれど,それ以上何も言わなかった。

ざわざわとして,胸がつまる。

ふと,こつんと何かが僕の手の甲に当たった。



「~っ」



悩む。

でも僕はこうする他ないと思って。

敦の,人差し指だけを数秒握り返した。

だめだ。

僕は敦のこんな行動が,たまらなく嬉しい。



< 92 / 163 >

この作品をシェア

pagetop