唇を隠して,それでも君に恋したい。
「どうも」
その件については僕としても言いたいことが山ほどある。
「何で黙ってた?」
「だって,言うたって焦らすだけやん。何かまずい方向に行きそうなら報告したけど,むしろ好転したやろ」
「ふ~ーーーーん」
「えー。全然納得してないじゃん」
ふはっと吹き出した和寧。
体育倉庫での事も,未遂を直接見られたのも。
もとを正せば全部和寧のせいなのに。
それでもこいつの言う通り,僕はこれ以上ない状況を手に入れた。
だから,どうしてもこれ以上の文句が言えない。
「そんなに好きか?」
「うん」
「何で?」
「好きだから」
タオルに着替えに,全部もって。
僕は正面から和寧を見た。
「答えになっとらんよ」
和寧は目を細めて,柔らかい声を発する。
「君には教えない」
お先に,と僕は個室に閉じ籠った。