唇を隠して,それでも君に恋したい。


「仕方ないだろ」



僕からも小さく返す。

僕が反撃するのは予想外だったようで,見上げる僕の目を見て敦は目を丸くした。



「僕だって人並みに恥ずかしいんだよ」



好きな人の隣でなんて,落ち着いて寝られるわけがない。



「じゃあ僕は歯磨きと髪乾かしに言ってくるから。あとは適当に決めて。荷物も邪魔だったらどかしていいよ」



咳払いで誤魔化すように,僕はまた洗面所へと戻る。

敦が,関係の名前が変わっただけであんなにも積極的な態度を見せるとは正直思っていなかった。

その事実に戸惑う自分がいる反面,彼の打ち明けた僕への想いが本物かもしれないと期待する。

そして

ー意外と焼きもち焼き?

なんて,以前では考えられなかった恋人らしい思考が,僕の頭に広がった。

翌朝。

僕は明るい日の光が差し込む部屋のなかで。

温かな人の体温と



「ちょっと……洒落にならん感じになるからやめてくれる?」



という困惑と呆れ混じりの和寧の声で目を覚ました。

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