唇を隠して,それでも君に恋したい。


「じゃあ,そろそろ別れよっか。俺たちのとこも,もう女子食べ終わってるみたいだし。行くよ,三太」

「あえーす」

「ほら,僕らも」



和寧に促されて,僕たちは今日一日のスケジュール通りの行動を開始した。

ハンバーガーは熱々ジューシーで,フルーツは瑞々しくて。

食べてばっかりだなと思いながらも,夜にはステーキをしっかりと腹に入れた。

基本的に僕の意見を全て尊重して貰ったような形で,リュー,和寧,敦には若干の申し訳なさのようなものを感じる。

そうか,明日帰るのか。

真ん丸の月の周りには,虹の輪郭が見えた。

そして,手のひらにそれを透かすように,僕は一人夜風を浴びていた。

少し,食べすぎたかな。



「大丈夫か,伊織」



敦の声だ。

僕は返事をするより早く,後ろを振り返る。



「うん。大分落ち着いてきた。今ならアイスも食べられるかも」

「調子のると痛い目みるぞ」



敦は僕の頭に大きな手のひらを乗せた。

ははっと笑って,僕もそれを受け入れる。

ふと沈黙が落ちて,僕もそれに倣う。

敦はその後,考えるように口を開いた。



「許される接触って,具体的にどこまで?」



これはいいんだろ? とでも言うように,今度はまた柔らかく撫でられる。

僕はそれも受け入れながら,どこまで……? と問われた通り考えた。

その間に,敦は手のひらの位置を変えたり,抱き締めてみたり,取りあえず順番に試すような行動を取る。

その度に僕はぴくりと動いて,拒否する理由のなさに恥ずかしく思いながらされるがままになった。

敦の手のひらが頬に触れる。

きす……

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