新 撰 組 終 末 記




 通されたのは、客間のような場所。



 入った瞬間に、畳の匂いが広がった。



総司「ここで待っててくださいね。局長たちを呼んできます」



 にこりと、人の良い笑顔を浮かべて、部屋から出ていった。



 残されたのは私と新八さん。



 シーンと、静まり返った。



新八「…あ、そーいえば俺の名前言ってなかったよね? 俺、永倉 新八っつーの。ヨロシクね」



『あっ…ゆ、雪乃です…!よろしくお願いします…!』



 改めて挨拶をする。



新八「ん、知ってる〜。雪乃ね
   俺のことは新八って呼んでよ」



『し、新八…さん』



新八「おー」



 小さく欠伸をしながら そう言う新八さん。



新八「雪乃ってさ〜、なんでいろんな流派がある中で、北辰一刀流を選んだの?」



 話が絶えないようにしてくれたのか、話題を振ってくれる。



 気まずかったから、ありがたい。



『道場が近くにあったので、北辰一刀流を習ったんです。剣術は、趣味だったんですけど…』



新八「でも雪乃って、なんか動きが洗練されてるよね。同業の匂いがするもん」



 同業…って、人を斬ったりするってこと…?



新八「足音とか、全然しないし〜」



 ……あれ…?これって、怪しまれてる?



 実は、男ばかりが嫌だから 私を誘ったというのは建前で、



 間者ではないか確認するために、連れてこられたのではないかと、思わず勘繰ってしまいそうになる。



 語尾を伸ばしたりして、親しみやすい雰囲気を醸し出しながらも、目の奥はちっとも笑っていない。



 ……思ったより、気が抜けない人かも。



 土方 歳三より、この男の方が案外 怖かったりして。



< 15 / 42 >

この作品をシェア

pagetop