新 撰 組 終 末 記
通されたのは、客間のような場所。
入った瞬間に、畳の匂いが広がった。
総司「ここで待っててくださいね。局長たちを呼んできます」
にこりと、人の良い笑顔を浮かべて、部屋から出ていった。
残されたのは私と新八さん。
シーンと、静まり返った。
新八「…あ、そーいえば俺の名前言ってなかったよね? 俺、永倉 新八っつーの。ヨロシクね」
『あっ…ゆ、雪乃です…!よろしくお願いします…!』
改めて挨拶をする。
新八「ん、知ってる〜。雪乃ね
俺のことは新八って呼んでよ」
『し、新八…さん』
新八「おー」
小さく欠伸をしながら そう言う新八さん。
新八「雪乃ってさ〜、なんでいろんな流派がある中で、北辰一刀流を選んだの?」
話が絶えないようにしてくれたのか、話題を振ってくれる。
気まずかったから、ありがたい。
『道場が近くにあったので、北辰一刀流を習ったんです。剣術は、趣味だったんですけど…』
新八「でも雪乃って、なんか動きが洗練されてるよね。同業の匂いがするもん」
同業…って、人を斬ったりするってこと…?
新八「足音とか、全然しないし〜」
……あれ…?これって、怪しまれてる?
実は、男ばかりが嫌だから 私を誘ったというのは建前で、
間者ではないか確認するために、連れてこられたのではないかと、思わず勘繰ってしまいそうになる。
語尾を伸ばしたりして、親しみやすい雰囲気を醸し出しながらも、目の奥はちっとも笑っていない。
……思ったより、気が抜けない人かも。
土方 歳三より、この男の方が案外 怖かったりして。