極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
Epilogue
 猛暑も過ぎ去り、あっという間に秋が訪れた。
 今日は私と拓海さんの結婚式。
 こじんまりしたチャペルで、式を執り行う。

「新婦の入場です」

 バイオリンでパッヘルベルの『カノン』が静かに流れる中、ゆっくりとバージンロードを歩く。
 その先には、シルバーグレーのタキシードを身に纏った拓海さんが待っている。
 その姿を見るだけで瞳が潤んでくる。
 拓海さん側のゲスト席には、お父様の姿もある。
 まだ不服そうではあるけれど、お母様が説き伏せたようだ。
 私のほうは親族がいないけれど、理沙や康太くん、春ちゃんたちも来てくれた。
 主祭壇の前へ辿り着き、拓海さんと並ぶ。
 司式者が式の始まりを告げたあと、誓いの言葉の儀へと移る。

「新郎、篠宮拓海。あなたはここにいる新婦、菜乃花を、悲しみ深い時も、喜びに充ちた時も、共に過ごし、愛をもって互いに支えあうことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「新婦、菜乃花。あなたはここにいる新郎、拓海を、悲しみ深い時も、喜びに充ちた時も、共に過ごし、愛をもって互いに支えあうことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「それでは指輪の交換を」

 列席者の列の一番後ろから、式場スタッフに促された拓斗がひょっこり現れた。
 そして拓斗は、緊張した面持ちでこちらへ歩いてくる。
 その手には、リングピローが乗せられている。
 拓斗は私たちのところまで歩いてきて、「はい」とピローを差し出す。
 「ありがとう」というと、拓斗ははにかんだ。
 拓斗に務まるかどうか心配だったけれど、それは杞憂だったようだ。
 拓海さんから私へ、私から拓海さんへと指輪の交換をし、誓いのキス。
 拓海さんとふたり、目を合わせて微笑んでから口付けを交わす。

「拓斗もおいで」

 手招きすると、不思議そうな顔をした拓斗がやってきて、拓海さんがそれを抱っこする。
 そして、拓斗を真ん中に挟んで、拓海さんとふたり、拓斗の頰にキスをした。
 拓斗は照れくさそうに笑い、チャペル内がやさしい笑いに包まれた。

 私たちの幸せな物語は始まったばかりだ。
 これからは家族三人、笑い合って暮らしていこう。
 そしていつか、ひとり、ふたりと家族が増えていったら素敵だなと思う。

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