極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
「実は私……」

 誰かにカミングアウトをするのは初めてで、とにかく緊張する。
 動悸がする胸をぎゅっとおさえた。

「貧乳、なんです」
「貧乳?」
「わー!大声で言わないでください!」
「普通のボリュームだぞ?君のほうが大声だ」

 ソファの上で頭を抱えて蹲った。
 オウム返しされてしまってとにかく恥ずかしい。
 きっと私の耳は真っ赤だろう。
 穴があったら今すぐ入りたい。なんなら掘りたい。

「そんな印象はなかったが」
「先生、今の下着はとてもハイテクなんです。いくらでも盛れちゃうんです」
「まあその辺りは男にはわからないな。だが、胸が小さいことの何が悪いんだ?」

 「それは……」と言いかけて、あのときの彼の言葉が浮かんだ。

『いや、あのさあ……お前胸ちっちゃいな。小学生みたい』

 笑いながら彼にそう言われて、頭が真っ白になった。
 思わず突き飛ばしてバッグを手に取り、彼の部屋から逃げるように去った。
 次の日から、私は学校に行かなくなった。
 彼が学校で友人たちに言いふらして、私を笑いものにしているかもしれないと思ったから。
 両親はそんな私を見て、いじめに遭っているとでも勘違いしたようだ。
 転勤を機に引っ越して転校することを提案してくれた。
 私はその話に飛びついて転校したため、あの日以来彼とは会っていない。
 ひとより胸が小さい自覚はあったけれど、修学旅行でお風呂に入った時に友人たちに揶揄われることはなかったから、あまり気にしていなかった。
 あとから思えば、あまりに小さすぎてネタにすらできなかったのかもしれない。
 転校してからは今までよりも多くパットの入った下着をつけ、偽物の胸だと気づかれないように細心の注意を払って生きてきたのだ。


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