極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
「嗜好はひとそれぞれだ。少なくとも、俺はそういうことは気にしない」
「せ、先生っ?」

 ブラウスに手を入れた先生は、あたふたする私をよそに、背中に手を滑り込ませる。
 頭がパニック状態でどうしたらいいのかわからない。
 器用にホックがはずされて、なけなしの膨らみに開放感を感じた。
 そのままブラウスがそっと捲り上げられる。

『いや、あのさあ――』

 いつかの記憶が蘇り、先生の反応が怖くてぎゅっと目を閉じた。

「……その男、殴ってやりたいな」

 先生の声に怒気が含まれていて、恐る恐る目を開く。

「こんなにきれいな胸なのに。それに、言うほど小さくもないぞ?」
「ひゃっ」

 ざらりとした舌が膨らみの頂を弄び、ギクリとして変な声が出た。
 先生はそのまま、今度は唇でやさしく喰む。

「ああっ」

 くすぐったいような気持ちいいような不思議な感覚と共に声が漏れ、思わず両手で口を抑えた。
 先生はいたずらに笑みを浮かべる。

「感度もいいみたいだな。ますますその男はもったいないことをした」

 自分の口からこんな甘い声が出るなんて思ってもいなかった。
 酒を飲んで失態を晒すより、ずっと羞恥でいたたまれない気持ちになる。

「先生、恥ずかしいです」

 両手で胸を覆い涙目になって訴えると、先生の悩まし気なため息が降ってきた。

「まずいな。今すぐ抱きたいくらいに興奮している」
「えっ!嘘ですよね?」
「嘘でこんなことは言わない」

 先生は私の右手を取って甲に口づけを落とす。

「小鳥遊さん。もう一度言う」

 口づけた私の手を握り、篠宮先生は真っ直ぐな視線で私を射抜いた。

「俺と結婚してほしい」



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