極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
 病院の隣駅のそばのイタリアンダイニングへ入ると、友人たちはすでにソファ席にいた。
「遅いよー菜乃花、理沙」
「ごめんごめん」
 急いで席に着くと、友人ふたり――春ちゃんと優ちゃんはすでにオーダーを済ませており、先に届いたアイスティーを飲んでいた。
「あれ?ビールとか飲まないの?」
 理沙が問うと、春ちゃんと優ちゃんは顔を見合わせて照れくさそうに笑う。
「実はね、私たち妊娠中で」
「……えっうそ!」
 私と理沙の声がハモった。
 春ちゃんに同棲している恋人がいるのは知っていたけれど、優ちゃんは前回、二ヶ月前に会った時にはフリーだったはずだ。
「春ちゃんはそろそろ結婚するかなって思ってたからおめでたもわかるけど、優ちゃんはいつの間に……」
「ふふ。色々あってね」
「いいなあ。私も次に続きたい!」
 ハイテンションで足をばたつかせる理沙。理沙にも長く付き合っている恋人がいるから、結婚は遠くない未来に訪れるだろう。
「菜乃花は?最近どうなの?」
 春ちゃんが身を乗り出して尋ねてきて、ギクリと肩が跳ねる。
「私は相変わらずだよ」
「もう、かわいいのにもったいない!彼氏の友達紹介しようか?」
 はは、と曖昧に笑う。
 こういう展開になると面倒なのだ。合コンだの紹介だのという話は決して少なくなく、無理やり連れて行かれたこともある。けれど、恋愛に消極的な私は、結局男の子と連絡先の交換すらせずに終わる。つまり時間の無駄。
「私はいいよ。それより、優ちゃんはどういう経緯でそうなったの?教えてよ」
「あーそうだね。私も聞きたい!」
 とりあえず難を逃れた。けれど、優ちゃんの話は正直あまり頭に入ってこなかった。結婚も妊娠も私には縁のないものなのだ。友人を羨んだり、ましてや妬んだりなんかしたくない。
 食事を終え、駅の近くでみんなと別れた。去り際に「次は菜乃花の話、楽しみにしてるからね!」とみんなに快活に微笑まれたため、私は精一杯の作り笑顔を返したけれど、心の鉛はずしんと重くなった。
 食事中にワインを飲んだものの、そのまま自宅に帰る気にはなれず、ふらふらと駅前の居酒屋に入った。
「すみません、生ひとつ」
「かしこまりましたー」
 オーダーをし、カウンター席に座った。テーブル席のほうは若者がたくさんいてざわざわと騒がしいけれど、そのBGMは案外救いかもしれない。
 ……若者、か。私はもう若いからと理由をつけてこの問題から逃げられる歳じゃないんだよな。二十七ともなれば結婚式に呼ばれる機会も増えてくるし、すでに三人の子を持つ母親になっている友人だっている。結婚も出産も、もう私の年齢では身近な話なのだ。友人たちに突っ込まれるのも仕方がない。
お通しのもずく酢とビールがカウンターに置かれ、半ば投げやりにジョッキを思いきり傾けた。

< 4 / 87 >

この作品をシェア

pagetop