極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
 五月に入ったばかりの空は、どこまでも青く冴え渡っている。
 気温はこの時期にしては少し高いけれど、風が吹いていて気持ちいい。

「また公園に寄って行こうか」
「うんっ」

 花村医院の隣は公園になっている。
 いつもここで遊んでから帰るのだ。
 手を繋いで中へ入ると、他にも子どもが何人か遊んでいた。
 拓斗は砂場へと一直線。
 砂場には、いつも遊んでいる名前のわからないお友達がいる。
 キャハハっと笑いながら、お友達の作ったお山にダイブしている。
 これは帰ったら部屋が砂だらけになりそうだな……いつものことだけれど。
 げんなりしながら、ベンチに腰掛け様子を見守る。
 たくさん遊んだ分早く寝てくれるといいな。
 ふうっとひと息ついて夕飯の献立を考えていると、「ママ!」と砂場から声がした。

「みて!きょうりゅう!」

 満面の笑みに一瞬ドキンとしたけれど、慌てて笑顔を返す。

「すごいね!上手だね」

 拓斗は得意に鼻の下を指で拭う。
 こういうとき、不思議と思う。
 少ししか見たことがないはずの拓海さんの笑顔と、拓斗の無邪気な笑い顔が似ていると。
 バカだな。
 目を閉じて自嘲する。
 もう私は拓海さんとは縁のない人間。
 いちいち思い出して感傷的になっていても仕方がない。
 けれど……拓海さんは結婚したのかな。
 子どもはできたのかな。
 だとしたら、いいパパになっているんだろうな……。

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