極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
「ずっと探してたのは本当だ。菜乃花は小児科か新生児科の病院に転職するだろうと踏んで、色々当たっていたんだ。見つけ出すのに四年近くもかかってしまった。その間に、子どもをひとりで育てていたなんて……」

 拓海さんがくしゃりと目を瞑り、苦しげな声を出す。
 四年近く。そんなに長い時間、私を探してくれていたなんて……。
 拓海さんが私だからプロポーズしたっていうのは本当のことなの?
 拓海さんの真っ直ぐな瞳に、嘘は少しも感じられない。

「菜乃花、愛してる。今度こそ離さない。菜乃花と拓斗くんを、これから俺に守らせてほしい」
「拓海さん……」

 胸を打たれて涙が滲み、それを慌てて指で拭った。
 泣いている姿なんて、拓斗に見られたら困る。
 それに、拓斗がいきなりこんな状況を受け入れられるとも思えない。

「今は、拓斗とふたりで楽しく生活しているんです。だから……」
「すぐにじゃなくていい。まずは拓斗くんに俺のことをゆっくり知ってもらいたいと思う。嫌か?」

 私自身は嫌なわけではない。
 むしろ、心の奥底にずっと拓海さんへの想いが燻っていたのだ。
 けれど、拓斗の気持ちが最優先だ。
 拓斗が嫌がるようならやめることにしよう。

「わかりました」

 ちょうど『夕焼け小焼け』の音楽が流れた。
十八時の合図だ。
 お友達と遊んでいた拓斗がこちらに駆けてくる。

「ママーおはなしおわり?」
「うん、終わったよ」

 拓海さんはかがんで拓斗に声をかける。

「拓斗くん、また会いに来てママと三人でお話ししたい。いいかな?」

 拓斗は嫌がる様子などさっぱりなく、あっさりとうなづいた。
 それから、連絡先の交換をして別れた。

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