極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
「用意できたよー」

 三人で席につき、手を合わせて「いただきます」をする。
 拓斗はまだ慣れない箸で一生懸命にハンバーグを切り分け、一口頬張る。
 拓海さんはその隣で姿勢よくハンバーグを口に運ぶ。

「お、本当においしいな」
「そうですか?お口に合うならよかったです」

 ホッと胸を撫で下ろし、私も自分の分を食べ始める。
 外では何度か一緒に食べたことがあるけれど、こうして家で食卓を囲むというのは新鮮だ。
 拓斗はいつもよりはしゃいでいる。
 ふと思う。
 朝は準備に追われて一人で食べさせることも多く、夜だって二人きりの食事。
 終われば私は家事をして、その間拓斗はひとりで遊んでいる。
 今さらながら、とても寂しい思いをさせていたのだ。
 だから三人で食べるこの時間は、拓斗にとってとても嬉しいものに違いない。
そう思うと、私も嬉しい。

「菜乃花?」

 ふと、声がして顔を上げると、拓海さんが私を覗き込んでいた。

「どうした?」
「いえ、なんでも。三人って楽しいなって」

 拓海さんは「ああ」と微笑む。

「幸せだな」

 彼が噛み締めるように呟いたその言葉が、胸に響いた。
 そうか。この気持ちを幸せと呼ぶんだな。
 拓斗とふたりでもじゅうぶん幸せだったけれど、ふたりよりも三人のほうが、幸せが大きいんだな。
 きっと私だけじゃなく、拓斗もそう思っているだろう。

< 93 / 102 >

この作品をシェア

pagetop