私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「この際ですから申し上げますが、私も危ない目に遭いました」
 ふいに佳乃が口をはさんだ。
「彼女が車に飛び出してきました。元レーサーの小幡だから避けられましたが、ほかの運転手なら避けようとして木にぶつかったことでしょう」
 狸を助けたときだ、と一鈴は思い出す。

「服が切り刻まれていたこともあります。彼女が来てからのことです」
「私じゃないです!」
「とにかく、あなたは出て行って!」
 恭子が叫ぶ。
 一鈴は内心で冷や汗を流した。
 追い出されたら報酬はどうなるんだろう。

 一鈴はじーっと穂希を見た。
 穂希は黙ってうなずいた。
 払ってくれるってことか。
 一鈴は少し安心して頬を緩めた。
「この状況で笑うって、どういう神経してるの!?」
 恭子はヒステリックに叫ぶ。

「笑ったわけじゃないです」
「とにかく彼女が出て行けばいいんですね」
 穂希が言う。
「早く追いだして」
「わかりました」
「あんたなあ!」
「いいの、コスモさん」
 予定より早く終わって五千万!
 へら、と笑ってしまい、また恭子に怒られた。



 一鈴は本邸から徒歩一〇分の離れにある休憩小屋に行かされた。横には鯉が泳ぐ池がり、それこそが爽歌の落ちた池だった。
 休憩小屋はログハウス風で二階建て。一階にはリビング、メイドの控室、簡単なキッチンとシャワー室、トイレがある。二階には寝室があり、Wi-Fiも完備だ。
 日頃から整備されているので自分の荷物を持って来るだけで良かった。
「結局、出ていけないんだ」
 一鈴はがっかりとうなだれた。
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