私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 それだとコスモがバカだと言っているみたいだ。
 彼女はバカじゃないし、そんなことするとは思えない。
 佳乃は一鈴を加害者だと思い込んでいる。車が避けなかったら死ぬのに、そんなことも考えられない人間だと思われている。
 むしろ佳乃が犯人で罪を一鈴にかぶせようと?

 思考が迷宮入りしそうだ。
 一鈴は首をふって、紅茶をぐびっと飲み干した。
 今は、自分が見たもの、体験したことを信じよう。
 コスモは犯人じゃない。

「犯人が私の生霊とか、ないですよねえ」
「いたら会ってみたいな」
 コスモはぷっと笑った。
「私に似てるみたいですから」
「似た背格好のメイドを探そう。事件後にやめた人がいないかも調べよう。ってあの男はもうこれくらいやってるか」
 あの男とは穂希のことだ。
 自分は一瞬でも疑ったのに、彼女は無実を信じてくれている。
 申し訳なくて、うつむいた。



 穂希が来たのはその夜だった。仕事帰りらしい彼はスーツのまま現れた。
「こんなところに追いやって、申し訳ない」
 穂希は深々と頭を下げた。
「やめてください!」
 おろおろと玉江を見ると、彼女は黙って控室に下がった。
 助けてくれないんかい!
 気をきかせたのだろうが、そうじゃない、と一鈴はうろたえる。

「とにかく座ってください」
 そう言うと、ようやく穂希は頭をあげてソファに座った。
 一鈴は緑茶を入れて穂希に出した。
「君が淹れてくれたんだ、ほかよりおいしいだろうな」
 またこれだ。
 なんだかさきほどうろたえた自分がバカみたいだ。
「茶柱でも立てればよかったですかね」
「人為的に立てられるのか?」
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