私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 ぞうきんは二枚あったので、二人で並んでリビングを拭く。
「メイドはいつもこんなに大変な思いをしているのか」
 腰をとんとんと叩いて、穂希は言った。
「おしゃべりしながら掃除してるとメイド長に怒られるんですよ」
「俺も子供の頃、怒られたな。メイドにいたずらしてさ」
「どんな?」
「カエルのおもちゃでびっくりさせた」
「古典的なやつ」
 あはは、と笑うと穂希も笑った。

「多美子さんはもう一人の母といっても過言じゃない」
 穂希が目を細めて言う。
 一鈴には怖いだけの多美子だが、穂希には良い思い出もたくさんあるようだ。
「家主がトイレ掃除すると金運が上がるらしいですよ」
「へえ。ここのトイレはどこ?」
「デリカシーって言葉、知ってます?」
「俺ほど繊細な男はいない」
「男の人って繊細ぶりますよね」
「君の男性観はどうなってるんだ」
「完璧ですよ」

 ふと見上げると、シャンデリアに埃がつもっていた。ずっと使ってなかったそうだから、目が行き届かなかったのだろうか。見つけてしまったらうずうずする。
 一鈴はダイニングから椅子を持ってシャンデリアの下においた。
「椅子、おさえててください」
「俺がかわるよ」
「大丈夫です。掃除の鉄則は上から下なので、床を掃除したあとにシャンデリアって本来の順番的にはダメですよ。ほこりが落ちるので気を付けてください」
 穂希に椅子を押さえさせ、一鈴ははたきを持って上にのった。

 と、椅子がぐらっと揺れた。
「あ!」
「一鈴さん!」
 とっさに目をつむった。投げ出され、体をうちつけた。が、頭はなにかに守られた。
 なにかが自分を守るように包んでいる、と思って目をあけると、白いシャツが見えた。
 穂希に抱きしめられていた。頭を守ってくれたのは彼の手だった。
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