私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「大丈夫か? やはり呪いが」
「大丈夫です。助けてくれたんだから呪いどころか救世主ですよ。掃除なんて言わなきゃよかったです」
「君でも弱音を吐くことがあるんだな」
 穂希がふっと笑った。

「なにごとですか!?」
 大きな音に驚いた玉江が飛び込んでくる。
 が、床に倒れた二人を見て跳び上がった。
「し、失礼しました!」
 慌てて部屋に戻って扉を閉める。
「違うんです!」
 とっさに叫ぶが、もう玉江はいない。

「俺はこのままそうなってもかまわないけどな」
「セクハラで訴えましょうか」
「君は婚約者なんだけどなあ」
 ぎゅっと抱きしめられ、一鈴の心臓が大きく跳ねた。
 深い意味はないんだ、と自分に言い聞かせる。助かってよかった、それくらいの意味しかない。
 シャツ越しに、穂希の体温も鼓動も伝わってくる。
 一鈴はもうなにも言えなくて、ただ抱きしめられていた。



 やっと彼が離れてくれたとき、一鈴はほっと息をついた。
「かたづけますね」
 倒れた椅子は足が一本とれていた。切られたような断面に接着剤がつけられた形跡があった。
「こんな雑な修理」
 穂希が横から覗く。
「こんなものを置いておくなんて。時任の管理不足だ」
「管理不足ですか」
 一鈴は驚いた。呪いと言わないなんて珍しい。

「これはあずかる。ほかに不良品がないか、時任にチェックさせる」
「信頼できる方なんですね?」
「そうだ。多美子さんも信頼できる。厳しいけどな」
 穂希がふっと笑みを見せた。
 どきっとして、一鈴は目をそらした。
「お茶、入れますね」
 一鈴は逃げるようにキッチンに向かった。
 淹れられたお茶には七本も茶柱が立っていて、穂希はまたふっと笑った。
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