私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「残すものはどれですか?」
「これだ」
 机の上に、小さな黒い招き猫と一体だけのシーサーがあった。
「二つじゃないですか」
「それくらいいいだろ」
「招き猫はともかく、シーサーを片方だけ?」
「片方とは」
「普通、オスとメスでセットです」

 一鈴はスマホでシーサーを検索して出す。
「口を閉じてるからこれはメスですね。オスが口を開けて福を呼び込む、邪気を払う。メスが口を閉じてるのは福を逃がさない、閉じ込める意味があるそうです」
「爽歌にもらったときから一体だった」
「あ、一体だけで飾っても問題ないそうです」
 セットの片方は彼女が持っているのだろうか。こっそりお揃いで。

「処分にもお金がかかります。売れるものは売りましょう」
「こんなもの売れないだろ」
「……自覚あるんですね。でも意外に売れたりするんですよ」
「そうか」
 穂希はスマホで時任に連絡し、時任は古美術商とリサイクルショップの店員を手配した。

 一時間後に到着した彼らは、表情を変えることなく査定をしていく。
「高い方に売りましょう」
「ちゃっかりしてるなあ」
 穂希が苦笑する。
 やはり美術品といえるものは少なく、ほぼリサイクルショップにひきとられた。スチール棚もひきとってもらえた。幸い、値段のつかないものもひきとってもらえた。

「今日だけで片付いてよかった。俺は忙しいから」
「働いてる姿を見たことないから想像つかないですね。あ、仕事の話はしなくていいですよ」
「話してくれって言う場面じゃないのか? 俺のことはなんでも知りたい、みたいな」
「間に合ってます」
「冷たいなあ」

 二人で部屋にはたきをかけ、床を掃いて拭き掃除もした。普段から時任と多美子が掃除をしているから、大きく汚れているところはなかった。
「かなりすっきりしたな」
 掃除を終えて部屋を見渡し、穂希は満足そうにつぶやいた。
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