私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「掃除して怒られることなんてあるんですね! 人生初です! 金持ちって不便ですね」
「そんなことを言う令嬢はいらっしゃいませんよ」
「私、メイドだったんですよ。それがなぜかこんなことに」
「玉の輿、うれしくないんですか? 毎日会いに来て、ベタ惚れじゃないですか」
 確かに彼は毎日のように来る。が、決して愛ゆえではない。

 昨日だってまったく色っぽいやりとりはなかった。
「良い運気をもらうんだ」
 と抱き着いてくるから、両腕を伸ばして引き離した。
「私の運が減ったらどう責任とるんですか」
「結婚したら総量が同じにならないか?」
「なりません。返してください」
「じゃあ君から抱き着いて」
「返さなくていいです」
 そんなことばっかりで、まったくロマンチックにはならない。
「開運グッズだよ。役に立ったならいいけど」
 一鈴のつぶやきに、玉江は首をかしげた。



 弟の陽太からメッセージが来たのは夜になってからだった。
『ちゃんとやってる?』
 それだけの文章に、涙が出そうだった。
 偽装婚約の契約は、あと二週間ほどで終わる。
 辞めちゃった、と帰ったらみんな驚くだろうか。
 ——でもきっと温かく迎えてくれる。母はごちそうを作ってくれて、父や弟たちは遠巻きに照れ臭そうに立って、妹はきっと大はしゃぎだ。
 みんなのためにも五千万を稼いで帰らないと。
 一鈴はスマホをぎゅっと握りしめた。


 
 翌日も一鈴は暇だった。
 暇すぎて、ダイヤのペンダントを洗うことにした。
 ダイヤは使っている間に皮脂などでくすんでしまう。
 ぬるま湯を用意して、中性洗剤を溶かす。20分ほどつけてから、ぬるま湯でよくすすぐ。
 最後はキッチンペーパーで優しく水分をふきとった。
 これだけで輝きをだいぶとりもどした。宝石によってはこの方法は使えない。

 莉衣沙はヒットコッターで順調にフォロワーを増やしていた。
 中辻龍之介とも仲良くなったようで、お見舞いに来てくれました! とうれしそうなツーショット写真が上がっていた。
< 83 / 206 >

この作品をシェア

pagetop