蜜月溺愛心中
キーホルダーに触れ、今日の思い出に浸りながら椿が言うと、「礼は言わなくていい」とすぐに清貴から言葉が降ってくる。

「これから、たまには色んな場所に出掛けたいと思ってる。だから礼はいい。笑った顔を見せてくれたら、それでいいんだ」

「清貴さん……」

色んな場所に出掛けたい、そう思ってくれる人がいることがこれほど幸せなのだと、椿は生まれて初めて知った。胸の高鳴りと共に、ある欲がムクムクと生まれていく。

「あの、腕を組んでもいいですか?」

水族館を回っている間、ずっと手を繋いでいたものの、姫乃のように腕を組むことが椿はできなかった。人が多くいる場所でカップルのように振る舞うのは、勇気が必要である。しかし今、周りには誰もいない。

「ダメ、ですか?」

清貴が何も言わないため、椿は不安になり訊ねる。拒まれるのが怖い。しかし清貴に触れたい。そんな矛盾した気持ちが、グルグルと頭の中を回っている。

「……ダメじゃない」

清貴はそう言い、椿に腕を差し出す。細く見えるものの、鍛えられた腕だ。椿はその腕にゆっくりと自身の腕を絡ませる。二人の熱が重なった。
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