KISSでチェンジ!
 純は慌てて声量を落とすけれど、良明は別に気にしている様子ではなかった。
「この前はそうだったけど、今度はスタジオに来てくれって頼まれたんだ」

「それで引き受けたのか」
 コクンと頷く。

 どうせまたお金でつられてしまったんだろう。
 盛大なため息を付きたくなったが、良明がそれでいいなら純に言うことはなかった。

 色々と世間からズレている幼馴染をいつも過保護に見守ってきたけれど、良明ももう高校生だ。

 自分の意思で考えて行動するのは当然のことだった。
 不意に純の心の中に寂しさが浮かんできて戸惑った。

それはまるで独り立ちをする子供を見守る親のような心境だったのだ。
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