君はまだ甘い!

第6話 恋心

元旦の朝、横浜の実家。
自分の部屋のベッドの上で、トオルは飛び起きた。

(あち!・・・え?あれ?)

確か今、自分はキスをしていたはずなのに、と首を傾げる。
夢?

トオルはなぜか、ゴルフ場のグリーンの上に立っていた。
目の前には、数日前に初めて会った年上の女性が、白いワンピースに包まれて、大きな丸い瞳で自分をじっと見つめている。
トオルはその瞳に吸い込まれそうな感覚に襲われ、思わずつま先に力が入った。

彼女は視線を外すと、そのままひざまづき、ゴルフウェアを着たトオルのシャツをおもむろにまくり上げる。
ゴルフ場に吹く初夏の爽やかな風が腹部をすっと撫でた。
その感覚に、ふと息を止める。
すると彼女は、露わになったその腹を愛しそうに摩り始めた。

まだ記憶に新しい、あのシーンが蘇る。

デジャブ?と夢の中の自分もそう感じているが、あの時と違うのは、自分がその感覚にうっとりと酔いしれていることだ。
柔らかくひんやりとしたその細い指が、自分の腹筋の線に沿って下から上にゆっくりと移動する感覚にゾクリとした。
徐々に上がってくるその手が胸まで辿り着いた瞬間、トオルは耐え切れず両手で掴んでいた。
彼女は驚いて立ち上がると、「ごめんなさい」と小さく呟いて俯いた。

トオルはたまらず、彼女の両頬に手を添え上を向かせると、ゆっくりと顔を近づけてその唇に自分のそれを重ねた。
柔らかなその感触に気持ちが高ぶり、徐々に激しいものに変わっていくが、彼女が抵抗する気配はない。
唇を離してそっと目を開けてみる。
目の前に映る彼女のその恍惚とした表情に、愛しい気持ちが抑えきれず、そのままグリーンの上に押し倒した。
鮮やかな緑色の芝の上に、白いワンピースがふわっと花が咲くように広がった。

両腕で体を支えながら、その上に覆いかぶさろうとしたその時・・・。

突然、背後から熱湯のようなものが浴びせられ、「あち!」と叫んで目が覚めた。

「何だ、今のは?!」
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