百物語。
ゆっくりと空気を飲み込み、リモコンを握り締めると、赤い電源ボタンに指を翳す。
なんとなく付けてはならないと、心の奥で警鐘が鳴っていた。
でも付けなければ変わらないとも思え、私は意を決してリモコンをテレビに向ける。
心臓の音が五月蝿く、指が思うままに動かないことに驚いたが、それを合図にすることにした。心音が徐々に激しくなってゆくと、それを遮るようにスイッチを押した。
「……………」
しかし、テレビが光ることはなかった。
「……?…」
おかしいと思わぬわけはなく、私は何度もスイッチを押す。電源の付く音はしなくて、私の焦ったような息だけが聞こえた。
ここへ来てようやくこれは夢ではないのだと知る。
「…なに…これ…どうなって…………」
訳が分からず私はリモコンを捨てるように落とした。ポスン、と軽くバウンドするそれ。
何故誰もいないのか、何故雪が降っているのか、何故寒さを感じないのか、何故テレビが付かないのか?
疑問は募るばかりで解答など一つも出てこない。
その時、ガチャンと音がした気がした。
「!!」
体がバネのように弾かれる。心臓が飛び上がって、私は静かに音のした方を向いてみる。キッチンだ。
「……」
そっと立ち上がり、食器棚を眺めてみると、また後ろから音がした。今度はすぐに反応して振り返ると、さっきあんなにスイッチを押しても付かなかったテレビが付いていた。
なんとなく付けてはならないと、心の奥で警鐘が鳴っていた。
でも付けなければ変わらないとも思え、私は意を決してリモコンをテレビに向ける。
心臓の音が五月蝿く、指が思うままに動かないことに驚いたが、それを合図にすることにした。心音が徐々に激しくなってゆくと、それを遮るようにスイッチを押した。
「……………」
しかし、テレビが光ることはなかった。
「……?…」
おかしいと思わぬわけはなく、私は何度もスイッチを押す。電源の付く音はしなくて、私の焦ったような息だけが聞こえた。
ここへ来てようやくこれは夢ではないのだと知る。
「…なに…これ…どうなって…………」
訳が分からず私はリモコンを捨てるように落とした。ポスン、と軽くバウンドするそれ。
何故誰もいないのか、何故雪が降っているのか、何故寒さを感じないのか、何故テレビが付かないのか?
疑問は募るばかりで解答など一つも出てこない。
その時、ガチャンと音がした気がした。
「!!」
体がバネのように弾かれる。心臓が飛び上がって、私は静かに音のした方を向いてみる。キッチンだ。
「……」
そっと立ち上がり、食器棚を眺めてみると、また後ろから音がした。今度はすぐに反応して振り返ると、さっきあんなにスイッチを押しても付かなかったテレビが付いていた。