きみのためならヴァンパイア
◆
しばらく歩いて、廃工場の外に出る。
そこには紫月のバイクが停められていた。
紫月から、私用のヘルメットを渡される。
「ちょっと待って、紫月、運転大丈夫?」
「は? 前にも乗ったことあるだろ」
「いや、だって、肩……」
紫月があまりにも平然としているから忘れかけていたが、肩を撃たれていたはずだ。
「もうなんともねーよ。ヴァンパイアは頑丈なんだ」
そうだとしても、さすがに実弾を受けておいてまったく痛まないわけはないと思う。
けれど免許もないのにバイクの運転を代わるわけにもいかないし、私はここがどこかもわかっていない。
「……本当に平気?」
「平気だって。早く乗れよ、置いてくぞ」
心苦しさは拭えないが、紫月に甘えることにした。
後ろのシートに座り、紫月に抱きつく。
「……いいか? 動くからな」
確か、バイクに掴まるところがあるって聞いたけど。
今は、これでいい。こうしたいんだ。
私は紫月のからだに回した腕に力をこめて、よりいっそう強く抱きしめた。