きみのためならヴァンパイア




しばらく歩いて、廃工場の外に出る。

そこには紫月のバイクが停められていた。

紫月から、(わたし)用のヘルメットを渡される。


「ちょっと待って、紫月、運転大丈夫?」

「は? 前にも乗ったことあるだろ」

「いや、だって、肩……」


紫月があまりにも平然としているから忘れかけていたが、肩を撃たれていたはずだ。


「もうなんともねーよ。ヴァンパイアは頑丈なんだ」


そうだとしても、さすがに実弾を受けておいてまったく痛まないわけはないと思う。

けれど免許もないのにバイクの運転を代わるわけにもいかないし、私はここがどこかもわかっていない。


「……本当に平気?」

「平気だって。早く乗れよ、置いてくぞ」


心苦しさは拭えないが、紫月に甘えることにした。

後ろのシートに座り、紫月に抱きつく。


「……いいか? 動くからな」


確か、バイクに掴まるところがあるって聞いたけど。

今は、これでいい。こうしたいんだ。

私は紫月のからだに回した腕に力をこめて、よりいっそう強く抱きしめた。


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