きみのためならヴァンパイア
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紫月の背中にしがみついていると、安心する。
ーー紫月のこと、もっと知りたいな。
私に出会う前、それよりも昔、紫月はどんな風だったんだろう。
私の知らない紫月の過去に思いを馳せる。
樹莉ちゃんとは、いつから知り合いなんだろう。
そういえば、蒼生って誰なのかな。
紫月に訊きたいことを考えていると、突然、バイクから異音がした。
道端にバイクを停め、紫月が原因を探る。
「……ダメだ、なんか細工されてる」
一度停めたバイクは、もうエンジンがかからなくなってしまったらしい。
陸君たちの仕業だろうか。
なんにしても、もうバイクに乗っていくことはできない。
紫月は、バイクをとりあえずこの場に置いていくことを決めた。
私は紫月に抱きつく口実がなくなって、少しだけ残念に思う。
すると、紫月に手を握られた。
「仕方ねぇから、歩いてくぞ」
当然のように指を絡められて、繋いだ手を引かれて歩く。
……こ、恋人繋ぎってやつじゃない?
さっきの残念な気持ちなんてすぐになくなって、代わりにどうしようもない照れくささに支配された。