きみのためならヴァンパイア



「え……それってーー」


ヴァンパイアが、ヴァンパイアじゃなくなった。

それはつまり、銀の弾丸で撃たれたということになる。

それか、水瀬いわくヴァンパイアは18歳まで血を飲まなければ人間になるらしいけどーー蒼生君が樹莉ちゃんの同級生なら私より年下だから、そういうわけじゃないだろう。


「……ハンターに、やられたの?」


紫月は頷いた。


「樹莉の目の前でな」


……樹莉ちゃんが言ってた『あの時』って、このことだったのかな。


「……両親と姉も、ハンターに撃たれた。だから家族はいないって言ったんだ」

「……そ、んな……」


ハンターにやられたということは、紫月の家族はみんな記憶をなくしてしまったということだ。

私は自分の家族が嫌いだけど、紫月はきっとそうじゃない。

いなくなってもいい家族だったら、そんな辛そうな顔をしないはずだ。


「……ま、昔の話だし、今はどっかで元気にやってるだろ」

「でもっ……でも、そんなの……」


簡単に飲み込める話じゃない。

きっと紫月にとって大切な家族だった。

お父さんとお母さんと、お姉さんと、弟の蒼生くん。

四人も失って、最後の王族になって。

紫月は、ずっと孤独だったのかもしれない。


紫月の家族は、どんな人だったのかな、なんて。

そんなことを考えたら、ふと、思い出した。


「……私、見た……」


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