きみのためならヴァンパイア
「見たって、なにを」
「夢で、四人が撃たれるところ……」
前に、五人家族が私の父親に撃たれる夢をみた。
たったひとり、男の子だけがのこされて、そこで目が覚めたんだ。
もしかするとあれは紫月の家族で、のこされた男の子が紫月だったのかもしれない。
「私、紫月のカプセルを持ったまま寝たから、紫月の記憶をみちゃったのかもしれない。……紫月の家族を撃ったの、私の父親だった……!」
「……俺の家族を撃ったのは一人じゃない。本当に俺の記憶をみたんだとしても、夢でみたのが全部真実かはわからないだろ。……お前の深層心理かなんかが反映されたんじゃねぇの。お前からすればハンターといえば自分の父親ってことだろ」
やったのが父親じゃないとしても、ハンターであることは事実だ。
手が震えて、力が入らない。
するりと抜け落ちそうな私の手を、紫月はぎゅっと強く握りしめた。
「陽奈が気にすることじゃない」
「……でも、」
「お前、もう家を出たんだろ。それにハンターになるつもりだってないんだろ? それならお前とハンターは無関係だ」
……紫月は、優しい。
これ以上うじうじ悩んでも、紫月を困らせるだけだ。
わかっているけどーー一度湧きあがった罪悪感は、簡単には拭えない。
「……ほら、他に訊きたいことないのかよ。今なら何でも答えてやるから」