きみのためならヴァンパイア
そこには道端に転がる、人ーーきっと彼は、ヴァンパイア。
その証拠に、日差しから隠れるように身をよじっている。
しかしひどい怪我で、動けないようだ。
一体何があったのだろう。
紫月は私に下がってろと言い残して、男の人に駆け寄った。
「おい、どうした?」
「ーーは、ハンターに、やられた」
息をするのもつらそうなその男の人は、震える手で建物の陰を指さす。
「向こうにも、俺のツレが……」
男の人は言い残すと、意識を失ってしまったようだ。
……ハンターにやられたというが、それならどうして記憶を失っていないのだろう。
紫月の後をついて、男の人が示した先を見に行った。
するとそこには、男の人よりも重傷と思われる人が二人倒れている。
その傍で、比較的軽傷に見える女の人が二人を介抱していた。
「なっ、何があったんですか……?」
思わず声をかけると、女の人は私の方を見て驚いたように固まった。
「えっ、あなた人間?」
ここはもうヴァンパイア居住区内で、普通の人間は近づかない。
だから女の人が言ったのはヴァンパイアからすれば当然の疑問だけど、紫月は私を背に隠し、答えさせてくれない。
「ハンターに襲われたって聞いた。どんな奴らだ」
「……奴らじゃなくて、一人だったの」