きみのためならヴァンパイア
「ーーそれじゃあ、手伝ってくれて本当に助かったわ。もう日も暮れるし、あとは自分たちでどうにかするから大丈夫。人間がこんなところにいたら危ないから、あなたたちも気をつけて」
女の人と別れ、不安な気持ちを抑えながら歩く。
「……どうかしたか。さっきから手と足同時に前に出てるぞ」
「えっ!? えっと、えっとね……」
水瀬のことを、話すときが来たのかもしれない。
どうせいつかは話そうと思ってたんだ。
でも、どこから話したらいいのか、なにから話せばいいのか、なかなか考えがまとまらない。
「心当たりでもあるのか、さっきの奴」
「……うん。そのうち話さなきゃって思ってたんだけど、実はねーー」
水瀬のことを、正直に言った。
遠い親戚だということ、ヴァンパイアに抱く思いが異常だということ、身体能力が優れていて優秀なハンターだということ。
それから、私にピストルを持たせたのが水瀬であることも。
「……その水瀬って奴が、病室に来たんだな?」
「そうだよ」
「あの時、お前の様子が変だと思ってた。そいつのせいか」
「そっ、そうだね。びっくりしちゃって!」
正直に話そうと思ってはいたがーーキスされたことなんて言えないし、許嫁だなんてことを言う覚悟もまだなかった。