きみのためならヴァンパイア
「ーーえ、えぇっ……? あの日、誕生日だったの!? ……あれ、でも人間になれるのは、血を飲まなかったヴァンパイアだけじゃ……」
「飲んでねぇよ。一回も」
「……え!? いや、でも、そんなーーじゃあ、今までのは……」
思い起こされる、今までの、あれやこれ。
散々噛みつかれて、散々羞恥に耐えていたのはなんだったのか。
「……噛みついてただけ」
「は、はぁ!? でも、す、吸うとかなんとかって言ってたよね?」
「あー、肌をな。血を吸うとは言ってねぇ」
……そんなこと、ある?
しかし、私もヴァンパイアになったからこそ、理解できてしまう。
吸いたいけど、吸いたくない気持ち。
だからせめて、ちょっと噛むだけーーなんて気持ち。
「……よかった」
「え?」
「ーー紫月が、私を覚えててくれて、よかったぁ……」
もう、なりふりかまわなかった。
紫月が私を覚えてた、そのことが何よりもうれしい。
情けなく泣く私を紫月は抱きしめて、優しく頭を撫でてくれた。
「……陽奈、迎えに来てくれて、ありがとな」