きみのためならヴァンパイア



出てきたのは、背中が少し曲がったおじいさん。

おっとりとした口調で、親しげに間宵紫月の名を呼んだ。


「あ、どうも……」


間宵紫月はなんだか少し気まずそうにする。


「偶然、通ったのかい?」

「そうっす」


私の知ってる彼が虎だとしたら、今は猫。

偉そうじゃないし、おとなしくしてる!

ヴァンパイアの王様といえど、目上の人には敬語を使うんだ。


おじいさんは何者なんだろう……そう思って視線を送ると、おじいさんと目があった。


「こんにちは、お嬢さん。紫月君のガールフレンドかな?」

「ちっ、ちが、違います! えっと、居候(いそうろう)! を、させてもらってて――」

「……彼女っす」

「ちょっと!?」


とんでもない大嘘を吐いた間宵紫月は、私に目配せをする。

話を合わせろ、とでも言わんばかりだ。


「素敵なガールフレンドができたんだね。あ、そうだ。紫月君、どうかな。例の件、彼女にお願いしてみてもいい?」

「えー……と、それはちょっと――」

「なっ、なに? 例の件って! なんか怖いよ!」


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