きみのためならヴァンパイア
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夜、紫月は先に寝てしまった。
私も寝る支度を整えて、廊下を歩いていたとき、玄関のドアがノックされた。
今は22時、人が来るような時間じゃない。
そもそもこの家に来客なんて見たことないし、インターホンを押さないのも不思議だ。
警戒しながらも、そーっと、ドアスコープから外を見る。
すると、そこに立っているのは樹莉ちゃんだった。
私が出たら怒りそうだけど、無視するのも気が引ける。
ドアガードをかけたまま、少しだけドアを開けてみた。
「樹莉ちゃん……どうしたの?」
「は? 樹莉のこと気安く呼ばないでくれる?」
やっぱり怒られちゃった。
「ご、ごめん……それで、何の用事かな?」
「……紫月のお見舞い。倒れたってマスターから聞いたから」
「あ、そうなんだ……でもごめんね、紫月、もう寝てるんだ」
「……あっそう。じゃ、渡すものあるからドア開けて」
ドアガードを外して、ドアを開ける。
――それからすぐに、後悔した。
私は樹莉ちゃんに嫌われている、そんな自覚はあったのに。
なんの警戒もせずドアを開けた私がバカだった。