きみのためならヴァンパイア
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心にあいた穴の埋めかたなんてわからなくて、ぼうっとしてたらあっという間に一日が終わりそうだ。
紫月の言葉を私は忘れなかった。
夜になって、窓から空を眺める。
すると、彼の言うとおりに満月がよく見えた。
まんまるの月はいつもより大きく、星の姿はかすむ。暗い空で唯一の光とさえ思えた。
……紫月、また私に会いに来てくれるのかな。
何にだって絶対、最後というものはある。
それって、いつだろう。
私が紫月と一緒にいられる日々の、最後。
そんなの、まだ来ないでほしい。
私はもっと紫月と一緒にいたい。
……だから、引っ越すだなんて。
「置いてかないで……」
思わずこぼす。
ひとりごと。そのはずだった。
返事があるまでは。
「連れてくけど?」
突然聞こえた紫月の声に驚きながらも、辺りを見回す。
下だった。
ひとつ下の階、空のフラワーボックスから、私の覗く窓のそれへと紫月が飛び移ってきた。
「こっ、ここ、5階だよね?」
「だからどうした? ちょっとどけ」
紫月は部屋に飛び込んで、私に紙袋を突き出す。
「持ってくものあるなら入れろ。ここ、出てくから」
「えっ……えぇ!?」