きみのためならヴァンパイア
「あー、電気は通ってんだけど、電球がダメだな……」
部屋の電気がうまく点かなくて、今晩は廊下から漏れる明かりを頼りにするしかないらしい。
「そっか、まあ見えるし大丈夫だよ」
「……お前、暗いのダメじゃなかった?」
言われてみれば、たしかにそうだった。
暗いところが苦手なのは、幼い頃から父親に暗い部屋に閉じ込められたことと、ヴァンパイアが襲いに来るイメージがあったせいだ。
それも、紫月と一緒にいれば、忘れるほどに怖くないなんて。
自分が一番びっくりしてる。
「なんか、大丈夫みたい」
「へえ。こっちは?」
ソファに座る私のお腹を、後ろから紫月がさする。
思わず小さく跳ねてしまい、恥ずかしさに襲われた。
「だっ、だだ、大丈夫……そんなに動かなければ……」
「そ。……傷、残るのか?」
「うーん、どうかな……? 特に聞いてないや」
そういえば病院でも、紫月は傷が残るか気にしていた。
「別に残っても私は――」
言いかけたとき、私の言葉は自分のお腹から鳴る音に邪魔された。
嘘でしょ。恥ずかしすぎる。
たしかにお腹は空いたけど、何もこんなしんとしてるときに鳴らなくたっていいのに。
「ち、ちが、これはお腹が減ったとかじゃなくて!」
「……正直になれよ。ほら」