きみのためならヴァンパイア
紫月はコンビニの袋を突き出した。
どうせまた栄養補助食品が入ってる……と思って袋を開けた。
けれど意外にも、サラダやおにぎり、カップ味噌汁など、バランスのよい食事を目指したようなラインナップだった。
「……すご。どうしたの?」
「なにが」
「努力の痕跡が見られる……」
「うるせ。食うなら食え」
お礼を言って食べようとしたとき、またお腹の虫が鳴いた。
それから、紫月がこらえきれないように笑う。
「せ、生理現象だから!」
「べつになんも言ってねーだろ」
「笑ってるじゃん! そういえば、バイク乗ったときも笑ってなかった!?」
「あ? あー、あれ。掴むの、そこかよと思って」
私が紫月を抱きしめたから笑ったの?
「なっ、なにが! 普通ああするんじゃないの?」
違うとしたら、恥ずかしすぎる。
「いや、掴むとこがあんの。バイクに」
恥ずかしすぎた。
「しっ、知らないもん!」
「俺はあれでよかったけどな?」
……それ、どういう意味。
聞いてもどうせ、紫月が優勢になるのがわかる。
私は勝負を放棄して、ごはんを食べることにした。