【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
 今にも発火してしまいそうなほどに、顔が熱い。

 視線を下げて、ラインヴァルトさまにそう伝える。けど、彼は「嫌だ」とおっしゃった。

「テレジアは、俺にこういう風に触れられるの、嫌か?」

 その問いかけに、私の胸に罪悪感が募る。嫌じゃない。むしろ……嬉しいって、思っているところもある。

(だけど、そういうの口にするのはどうなの? 軽い女だって、思われない……?)

 貴族の子女たるもの、簡単に男性に身を委ねてはならない。

 お母さまはよくそうおっしゃっていた。……けれど、身を委ねるってどこからどこまでなのだろうか?

(抱きしめられるのも、身を委ねるということ? ううん、これはそういう意味では……)

 頭がぐるぐると回って、どうにかなってしまいそうだ。

 混乱する私に気が付かれたのか、ラインヴァルトさまが「テレジア」と私の名前を呼ぶ。

 恐る恐る顔を上げれば、彼が呆れたような表情を浮かべていた。

「あんまり深く考えるな。……そもそも、これくらい挨拶だ」
「……挨拶」

 抱きしめるというのは、挨拶なのだろうか?

 きょとんとする私に、ラインヴァルトさまは笑みを向けてくださった。

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