【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「婚約者同士なら、これくらい普通だ。線引きをするのならば、口づけまではセーフ。それ以上はアウト」
「……そ、うなのですか」

 私が割ときっちりと線引きをしたいタイプであるということを、ラインヴァルトさまはよく存じていらっしゃる。

 だからか、そういう説明をしてくださった。

 納得する私に、ラインヴァルトさまは深めた笑みを見せてくださる。心臓が、とくんと大きく音を鳴らす。

「で、ですが。……あまり、こういう風に密着されるのは」

 かといって、密着していい理由にはならないだろう。

 それに、だ。……私が密着を嫌なのは、世間体を気にしているという意味ではなく、恥ずかしいから。私の心の問題であって……!

「ふぅん」
「は、恥ずかしすぎて、顔から火が出そうなのです……!」

 決して、嫌だと思っているわけではない。

 そういう意味を込めて、言葉を付け足す。

「私、こういう風に男性と密着したことがっ……!」

 ゲオルグさまと、こういうコミュニケーションは取らなかった。だって、彼は私のことを疎んでいたわけだし。

 面白みのない女って、吐き捨てられるほど嫌われていたのだもの。

「そっか。……じゃあ、俺が初めてなんだ?」
「もちろん、です」

 照れくさくて、俯いたまま首を縦に振る。ラインヴァルトさまは、満足そうに「そっかそっか」と言葉をくださった。

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