愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「そういうの、やっぱりめちゃくちゃ嬉しいな」
「……ラインヴァルトさまは、どうですか?」

 ふと気になって、私が彼にそう問いかける。彼は、きょとんとされていた。

「その、こういう風にするのは、私が初めて……でしょうか?」

 もちろん、経験があったとしても別にショックではない。ただ、一応確認っていうだけであって。

「うん? そうだよ。……俺がこうするのは、テレジアが初めてだ」

 しかし、問いかけに対する返事は予想よりもずっといいもので。……嬉しくて、なんだかちょっと心の中が満たされたような気がする。

「嬉しいの?」
「……はい」

 静かに首を縦に振れば、ラインヴァルトさまは私の身体をさらに強く抱きしめてこられた。

 ぎゅっと抱きしめられて、心臓がまた駆け足になる。

 このままだと、離れるのが名残惜しくなってしまいそう……。

「俺は、なにがあってもテレジアが好きだよ」
「……はい」

 ただ、どうしても。私は、「私もです」と返せなかった。

 その勇気は、まだ生憎私の中にはなかったから。
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