愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「テレジアさま。お疲れさまでした」

 教師と入れ替わりに、ミーナがやってくる。彼女はワゴンを押しており、ワゴンの上にはティーセット。

 ミーナは流れるような仕草でティーポットからカップに紅茶を注いでいく。さすがは王城に仕える侍女というべきか。動きは滑らかで、迷いがない。

「……ねぇ、ミーナ」
「どうなさいました?」

 私が声をかければ、彼女はカップを私の目の前に置いて、返事をくれた。

 カップを手に取って、ミーナを見つめる。

「ミーナから見て、私ってどうなのかしら?」

 少し困らせるような質問だと思う。だけど、聞いておきたかった。

「どう、とは?」
「その……ラインヴァルトさまに、相応しくなっていると思う?」

 どういう風に聞けばいいかがわからなくて、考えた末にそう問いかけてみる。

 ミーナは、きょとんとしつつも「はい」とためらいなく頷いてくれた。

「以前に比べて、本当に素晴らしくなっておりますわ。……あ、もちろん、以前が悪かったというわけではございませんよ」
「……知っているわ」

 ミーナがそういうことを言う侍女だとは、思っていない。

 そういう意味を込めて笑みを向ければ、ミーナがほっと胸を撫でおろしていた。

「立ち振る舞いも、所作も。本当に素晴らしくなられました。この調子ですと、ラインヴァルト殿下と並べる日も近いかと!」
「……そう」

 その言葉は、どんな褒め言葉よりも嬉しい。

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