【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「彼の隣に堂々と並べるようになったら、私ね、気持ちを伝えるつもりなの」

 ミーナに笑みを向けて、そう言う。彼女は一瞬だけきょとんとしたものの、すぐに手をパンっとたたいた。

「そうなのですね! きっと、いいえ、間違いなく殿下も喜ばれますわ!」

 けど、そこまで手放しに言ってもらえるとむず痒い。

 そんなことを思って、私は俯く。

(後の、問題は……)

 そう思って、私はちょっとため息をついてしまった。

「テレジアさま?」
「いえ、なんでもないわ……」

 ミーナが心配そうな表情を浮かべるので、私は笑みを向けてゆるゆると首を横に振った。

 カップを口に運んで、飲む。温かくて、心が落ち着いた。

(あとは、ゲオルグさまのことを、どうするか……)

 あの日、ゲオルグさまと再会してからというもの。どうしてか、彼は私にしつこく関わろうとしてくるのだ。

(さすがに迷惑なのだけれど……)

 あるときは王城の庭園で。またあるときは、図書館で待ち伏せされる。一番ひどいときなんて、王城の廊下だ。

(彼の狙いは、一体なんなのかしら……?)

 ただ私にちょっかいを出したいだけでは、ないと思う。

 もしかして、なにかよからぬ企みがあるのでは……?

「いえ、考えすぎね」

 でも、そう言って暗くなった気持ちを振り払った。

 そして、紅茶の入ったカップをもう一度口に運んで、ミーナに笑みを向けた。
< 125 / 175 >

この作品をシェア

pagetop