【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「……ここには近づくなと言っていただろう」
「ですが、王妃殿下のご命令ですので」
「……母上の?」

 王妃殿下。その単語を聞かれたラインヴァルト殿下の目が、揺れた。

「一時間後に執務室に、とおっしゃっておりました」
「はぁ?」

 心底嫌そうな声を出されるラインヴァルト殿下。従者はそんな彼に怯むことはなく、頭を下げる。

「王妃殿下のご命令ですので、王太子殿下に逆らうことは許されません」
「……クソッ」

 ラインヴァルト殿下の表情が見る見るうちに険しくなっていく。

 そんなに、王妃殿下に会われるのが嫌なのだろうか?

(王妃殿下は、とてもお優しくておおらかなお方なのに……)

 私も何度か会話をさせていただいたけれど、つねに笑みを崩さない素敵な女性だった。

 ……もちろん、息子であるラインヴァルト殿下に見せる一面とは、全然違うのだろう。だけど、あの王妃殿下が無茶ぶりをするなんて考えにくい。

 そう思っていれば、従者が私に視線を向けてきた。少し戸惑って、視線を逸らす。

「殿下。私は、とりあえず待っておりますので……」

 正直、この間に帰ろうかという気持ちは微かにある。が、帰る勇気が出なかった。

 ……帰ったら、なにをされるかわからないから。主に、両親に。

「……テレジア嬢」

 ラインヴァルト殿下が、まるで縋るような目で私を見つめられる。

 安心させるように、私は頷く。

 しかし。次に続けられた従者の言葉に、私はあっけにとられるしかなかった。

「あと、テレジア・エーレルトさまにも、共に来ていただきたいということでございました」
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