【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「……え」

 私の口から間抜けな声が漏れた。私の目は、間違いなくぱちぱちと瞬いていると思う。

 戸惑い、困惑して、私の視線が彷徨う。それに気が付かれたのか、ラインヴァルト殿下が私の肩を抱き寄せられた。

「……母上には言っておけ。俺はともかく、テレジア嬢を呼び出すなと」

 いつもよりも数段低い声。背筋がゾクリと粟立って、なんとなく嫌な空気を醸し出すような声。

 私が恐る恐るラインヴァルト殿下のお顔を見つめれば、彼は私を安心させるように笑いかけてくださった。

「お伝えはさせていただきますが、今回ばかりは王妃殿下のご命令ですので」

 従者は淡々とそう告げる。その視線が私を射貫いて、なんだかいたたまれなくなる。

 多分彼は、私の言葉を待っている。

「行く必要はない。昨日の今日だ。体調が悪いとでも言っておけばいい」

 ラインヴァルト殿下が、私の髪の毛を手で梳きながらそう言ってくださる。

 ……体調が悪いと言っておくということは、それすなわち仮病だろう。……そんなの、悪い。

(それに、居候させていただいているのだもの。挨拶くらいは、するべきではないの?)

 私を居候させると決められたのはラインヴァルト殿下だけれど、同じ屋根の下に住んでいるのだ。王妃殿下にも、国王陛下にも。一応挨拶をしておくのが礼儀というものだと思う。

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