【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「……テレジア嬢?」

 ラインヴァルト殿下のお顔を見上げる。彼は、優しく私に微笑みかけてくださる。私なんて、愛される価値もない小娘なのに。

 このお方は、何処までも慈しんで、大切にしてくださる。未来永劫、これは変わらないような気もした。……ただの、憶測で勘なんだけれど。

「私、王妃殿下にお会いしとうございます」

 彼の目を見つめて、震える声でそう伝える。……ラインヴァルト殿下が、目を見開いたのがわかった。

「……そんな必要はない。あの人に会う必要など、これっぽっちもない」

 彼は目を細めてそうおっしゃるけれど。……私が、しっかりとしたかったのだ。礼儀は大切。それは、私の考えの根本に根付いている。

「いえ、居候させていただいているのです。……挨拶は、するべきでございます」

 貴族は基本的に家のことは女主人が取り仕切る。王城でも同じだという保証はないけれど、そうなればこの王城の主は王妃殿下となる。一言も挨拶せずに、感じが悪くなるのだけは避けたい。

(その、ラインヴァルト殿下が、変な小娘に捕まっているとは、思われたくないもの……)

 決して、私のためじゃない。ラインヴァルト殿下の名誉のためだ。

 そう、そうに決まっている。

「テレジア嬢」
「……はい」
「俺的には絶対に会ってほしくない。あんたになにかあったら、後悔してもしきれない」

 そのお言葉は、まるで戦場に向かう兵士に向けたような言葉だと思った。私は、ただ彼のお母さまに会うだけだというのに。

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