【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「殿下……」

 静かに彼のことを呼べば、彼がゆるゆると首を横に振った。まるで、幼い子供が間違えたことをしたときのような態度。

 ……私は、なにか間違えてしまったのだろうか。

「もうそろそろ、その殿下ってのはやめてほしい。……なんだか、他人行儀だろ?」
「……ですが」

 確かに他人行儀だけど、私とラインヴァルト殿下の関係は他人……知り合い、みたいなものだと思う。

 だから、呼び方を変えることなんて出来ない。

「呼び捨てにしてくれても、いいんだけど」
「それは無理です!」

 彼の言葉にぶんぶんと首を横に振る。そんなこと、出来るわけがない。呼び捨てなんて、ハードルが高い。雲よりも高い。

「普通に、不敬ですから……」

 ちょっときつく言い過ぎたような気もして、フォローとばかりにそう付け足した。

 ラインヴァルト殿下は、狼狽える私の様子を見て笑われる。

「冗談だよ」
「……質の悪い冗談です」

 本気にしてしまいそうだったのだから。

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