【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
 その声にこもった確かな熱に、胸がぎゅっと締め付けられる。鼓動がどんどん早くなって、いっそ苦しさまで覚えてしまう。

「今はさ。……唇には、出来ないから」

 ラインヴァルトさまの指先が、私の唇をスーッと撫でた。撫でられた箇所が、まるでじんと熱を持ったような感覚に襲われる。

 どんどん鼓動が早足になって、もうこのまま死んでしまうのではないか……と思ってしまうほどだ。

「真っ赤なテレジアも、最高に可愛い」

 彼が私のことを見つめて、そういう。……真っ赤、なのか。

(ううん、それは、当然だわ……)

 こんなにも熱烈に愛を告げられて、そうならないはずがない。ゲオルグさまは、そういうタイプじゃなかったし……。というか、むしろ嫌われていたし……。

「こんな表情をさせているのが俺だって思うだけで、すごく嬉しいんだ」
「わ、私、どんな表情しているのですか……?」

 自分の表情がわからない。鏡でもあれば別なんだろうけれど……。

 そう思いつつ、私はラインヴァルトさまを見つめる。彼は、唇の端を吊り上げた。

「めちゃくちゃ真っ赤。あと、すっごく可愛い表情」
「こ、答えになってないです……!」

 すっごく可愛い表情って、どんな表情なんだろうか……。

 私がそう思うよりも先に、ラインヴァルトさまが立ち上がられる。そのまま、流れるような仕草で私に手を差し出した。

「中庭を案内する」
「……は、はい」

 彼の手に、私はおずおずと自らの手を重ねる。ぎゅっと握られた手が、熱い。

(まるで、どうにかなってしまいそう……)

 いや、むしろ。

 きっと、もうすでに私は。

 ――どうにか、なってしまっているんだろう。

 そう、思ってしまった。
< 62 / 175 >

この作品をシェア

pagetop