捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
 今度は、痛みを伴うほどに強い力だった。眉間にしわが寄って、頭の中がちょっとすっきりとする。

「そんなこと言わないでください。自棄になるのは、ダメですよ」
「……でも」

 自棄にもなりたくなるだろう。

(確かに、勘当を選んだのは私。……けど、浮気とか婚約破棄宣言とか。元を言えば私は悪くないのよ……!)

 アードリアンさまが浮気をしたのは、私の所為じゃない。そもそも、政略結婚なんて愛がなくて当然。好きとか嫌いとか。そういうことで左右されないのが普通だ。……まぁ、今回はいわば格差婚みたいな感じだったので、左右されたんだけれど。

「こんな状況で、自棄になるなっていうほうが無理です……!」

 昔から『女』っていうだけで、差別されてきた。兄や弟は大切に大切に育てたのに、私なんて必要なくなればぽいっと捨てられるような存在だ。……婚約破棄された娘という瑕疵があっても、少しくらい優しい言葉をかけてほしかった。

「大体、両親にも婚約者にも、捨てられた私なんてどうなってもいいんです……!」

 お酒に酔ったからなんだろう。普段の自分じゃ到底言わないような言葉が、ポンポンと口から出てくる。

 ……どうやら、割と婚約破棄と勘当がショックだったらしい。今更、それに気が付く。
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