捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「そんな……そこまで、甘えるわけにはいきません」

 ゆるゆると首を振って断りを述べれば、彼は顎に手を当てて少し考えるような素振りを見せる。

 その後、思いついたようにポンっと手をたたいた。

「じゃあ、こうしましょう。俺はあなたの未来に先行投資したんです」
「……え?」
「あなたが立派になったら、お金を返してください」

 彼はさも当然のようにそう言う。私はぽかんとすることしか出来ない。

「……ということを考えたのですが、どうでしょうか?」

 なにも言わない私を見て、不安を抱いたのだろう。ヴィリバルトさんが肩を縮めてそう問いかけてくる。

 ……このまま突っぱねていても、なにも解決しない。

 それに必要なものは必要だ。この提案は、素直にありがたい。

(甘えているわけでは、ないものね)

 いずれ返すのだもの。問題ない。

「では、その。そういうことで、お願いします」

 ペコリと頭を下げれば、彼は「よかった」と呟いていた。

「折角生活するのならば、快適に過ごしていただきたいので」

 口元を緩めて、彼がそう言う。……本気でそう思っているかのような口調に、ちょっと驚く。

 だって、こんなにも親切な人がこの世にいるんだって……思わなかったんだもの。
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